連載#11 ”優秀”と”異質”の違い

”優秀”と”異質”という二つの言葉は一見全く別の軸で語られるように見えるため、わざわざ両者の違いについて言及することに意味を感じないという人も多いと思う。

ただ、実は多くの人がこの二つの性質を混合して考えてしまっていることが多い。
そこで今回は、あえてこの2つの性質の違いについて言及してみたいと思う。

まずは両者について共通の認識を得るために、辞書的な定義を記載しておく。

【優秀】
非常にすぐれていること。また、そのさま。

Weblio辞書

【異質】
性質の違うさま。また、その性質。

Weblio辞書

辞書でも簡潔かつ明瞭に定義されている通り、この2つの言葉の定義は極めてわかりやすい。
それゆえに、書く言葉の定義については、多くの人が至極当然のように理解していると思う。
ただし、冒頭で述べたように、やはりこの2者を混合してしまうケースが実は極めて多い。

では、具体的にどのようにこの2者は混合されるのか。
それは、”異質”なものを”優秀”なものと捉えてしまうというケースだ。

優秀であるという状態は、”同じ軸の中で”より優れている状態を指すことが定義上正しいはずだ。
しかし、我々の多くは、”軸がそもそも異なる”という意味である異質さを、優秀さと混合してしまうことが極めて多い。

つまり、異質さという横方向(x軸)のずれを、優秀さという縦方向(y軸)のずれと混合してしまうというわけだ。
x軸, y軸という言葉でおきかえ2次元で整理してみると、そんなあからさまな誤りを犯してしまうものかと感じるが、このミスは極めて頻繁に発生する。

具体例を出してみよう。
例えば、最もわかりやすいのが人種の違いだ。
人種が異なること、つまり互いに異質であり、x軸でのズレがあるというのが人種の違いである。
しかし、この世の中にはいまだに人種差別が蔓延っている。
つまり、どちらの人種の方が優れているなどといった発想で、x軸のずれをy軸のずれと混合して考えてしまっているのだ。

また、なんとなく西洋の人は背が高、鼻筋も通っていてかっこいい、といった認識を持っている人も少なくはないと思う。
これに関しては個人的な好みの問題なので、あまり今回の文脈で言及するのは避けたいところだが、西洋人はルックス面で優れていると感じるステレオタイプもまた、この縦横の軸のずれを混合してしまっているケースの一つだと言える。


ここまでは人種という少し重たい話を持ち出したので、テーマを変えたい。
というのも、我々が生きていく上で、この縦横の軸の違いを認識しておくことが極めて重要なのだ。

より解像度を上げて述べると、我々は人生の中で、自分と異質な人を見つけては嫉妬をし、その嫉妬心に揺さぶられて自分が本来大事にすべき人生の軸をブラしてしまうことが極めて多い。

例えば、

  • 同級生が有名な外資系の大企業に就職した。
  • 友人がアメリカに留学し、楽しそうな日々を送っている。
  • SNSで非日常的なキラキラした投稿が流れてくる。
  • 転職してみたら、自分より歳下の同僚が、仕事ができる。

このような状況に置かれた時に、多くの人は嫉妬をし、感情に揺さぶられてしまうことが多い。
しかし、このような時こそ、今回言及しているように、その嫉妬心の根源がx軸とy軸いずれのずれから生じているのか?という点を一度冷静に考えることが重要になる。

自分が人生で成したいこと(いわゆる”志”)と同じ軸に対して、より優秀な人を目の当たりにして嫉妬しているのであれば、これはy軸のずれから生じる感情のため、ある意味健全な嫉妬心と呼べる。
このような場合は、むしろその嫉妬心を燃料に闘志を燃やしていくことで、自分の志に対する活力となりうる。
また嫉妬を感じたその相手については、同じ志をもつ”同志”として、生涯を通しての貴重な仲間となりうる。


一方で、嫉妬心が異質性、つまりx軸のずれから生じているのであれば、注意が必要だ。
というのも、異質なものに対して嫉妬心を抱き軸をブラしてしまうと、自分が人生で大事にするべき本来の軸を見失ってしまう可能性が高いためだ。
自分の軸を見失い、自分が本来重視しているわけではない軸生きても、納得できる人生を送ることは難しい。
また、世の中の人間は十人十色で、異質なことが当たり前だ。
全く同じ人間などいなければ、そもそも掲げている志も、価値観も何もかもが異なっているのが普通だ。
その異質性に何度も感情を揺さぶられ続けていては、キリがない。

つまり、今回の”優秀”と”異質”の違いに関する言及から伝えたいことはこうだ。
もし人生の中で嫉妬心や妬みが生まれることがあれば、一度冷静にその感情がなぜ起こったのかを考えてみてほしい。
その感情は、”優秀さ”と”異質さ”のいずれから生じているのかを、自分の中で問いかけてみるのだ。
この時に、異質さから来ている嫉妬心にはあまり気を取られないほうがいい。
自分の定めている人生の軸に対して必要な感情のみを大切にして、精進していくことが重要なのだ。

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